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PRIMA LAB
Mixed Reality · 3D Eye Tracking · 2021

目線が向かう先を,
3D空間で捉える.

MR空間の奥行きにある物体へ,人はどのように視線を向けるのか.両眼の動きから3D視線を推定する研究.

3D Gaze on Stationary and Moving Visual Targets in Mixed Reality Environments — 静止・移動する仮想ターゲットを使い,立体的な視線計測の方法と精度を調べました.

MIXED REALITYBINOCULAR GAZE3D EYE TRACKING
01 / MOTIVATION

画面上の「どこ」から,空間内の「どこ」へ

通常の視線計測は画面上の2D座標を調べます.しかし,Mixed Reality(MR)では仮想物体が異なる奥行きに配置され,手前と奥のどちらを見ているかも重要です.

本研究は,左右の眼球の視線方向を計測し,3D空間上の注視位置を推定するシステムを構築.物体までの距離,背景の奥行き手掛かり,見かけの大きさが測定にどう影響するかを調べました.

MRインターフェースにおける注視対象の推定や,立体的な視覚行動の分析に向けた基礎研究です.
研究で使用した両眼カメラ付き光学シースルーHMDと眼球映像
論文 Fig. 3より:試作した3D視線計測装置.左右の眼球映像を同時に取得します.
02 / SYSTEM

両眼カメラを組み込んだMR用トラッカー

光学シースルーHMDに小型カメラを取り付け,両眼の瞳孔位置から視線方向を推定します.左右の視線の交わりを利用して3D視線位置を計算します.

計測システムの構成
項目論文で使用した設定
表示装置EPSON Moverio BT-30E(光学シースルーHMD)
眼球カメラ左右2台,各60 Hz
瞳孔計測940 nm赤外線透過フィルター,Pupil Capture
描画・通信openFrameworks 0.11.0,ZeroMQ
仮想物体の生成両眼間距離を6.3 cmに設定
3D視線推定両眼の水平・垂直視線角を多項式に変換

出典:論文 Section II–III.装置は研究目的で作成した試作機です.

1

眼球を撮影

左右カメラで瞳孔を検出し,眼球の向きを推定します.

2

視線を校正

奥行きの異なる既知の仮想点を見て,多項式の係数を求めます.

3

3D位置を計算

視線角度を空間座標へ変換し,注視点の軌跡を可視化します.

03 / EXPERIMENTS

背景と物体サイズを変えて比較

奥行きを感じる家具のある室内と,奥行き手掛かりの少ないスクリーン環境を比較.さらに仮想物体の大きさを変える2つの提示方式を使いました.

参加者と測定環境
参加者男性5名,平均23.6歳
移動視標の解析4名(1名は追跡困難で除外)
観察位置対象の棚/スクリーンから250 cm
照度・色温度約150 lx・5500 K
比較環境奥行き手掛かりあり/なし
仮想ターゲットの設定
校正点36点,4つの奥行き平面
評価用静止点12点(75,125,175 cm)
静止点の提示各3秒
移動点11の位置,200 → 50 cm
移動時間5秒(両端で各1秒停止)
物体の大きさ視角約2°一定/物理サイズ一定
視線校正用の36点と移動ターゲット軌跡の3D配置
論文 Fig. 6・8より:3D校正用の視標配置(左)と,接近する移動視標の経路(右).
04 / RESULTS

校正点での適合と,未知の点での精度は異なる

3D位置への変換には,係数45個のType Iと,視線角の制約を加えた係数22個のType IIを比較しました.校正点にどれだけ合うかと,別の位置を見たときの精度を分けて評価しています.

校正点での平均3D視線誤差(cm)
環境ターゲットの大きさType I/45係数Type II/22係数
奥行き手掛かりあり物理サイズ一定17.2524.02
奥行き手掛かりあり視角一定17.9724.65
奥行き手掛かりなし物理サイズ一定18.1125.21
奥行き手掛かりなし視角一定14.7220.68

出典:論文 Table I.誤差は小さいほど良好.校正点ではType Iの誤差が小さく,多項式の種類の主効果は有意でした(p = .002).

校正に使っていない静止視標での平均誤差(cm)
推定式係数の数平均3D誤差評価
Type I4532.11 cm校正点への適合が良い
Type II2226.88 cm未使用点でより良好

出典:論文 Table II.対応のあるt検定で差が認められました(t(19) = 2.640,p = .016).値は評価用の静止視標での結果であり,実用的な高精度を達成したことを意味しません.

複雑な式が,いつも正確とは限らない

係数の多いType Iは校正に用いた点にはよく合いました.一方,校正に使っていない静止点では,より単純なType IIの方が誤差を抑えました.3D視線計測では,未知の位置に対する再現性を確かめることが重要です.

05 / MOVING GAZE

接近する仮想ターゲットへの視線を3Dで可視化

奥から手前へ動く視標を追跡し,視線が空間内でどう移動するかを3D軌跡として表示しました.奥行き手掛かりの有無や見かけの大きさを変更しても,本実験の範囲では統計的に有意な精度差は確認できませんでした.

2人の参加者が移動ターゲットを追ったときの3D視線軌跡
論文 Fig. 11より:移動する視標に対する参加者2名の3D視線軌跡.色線が推定視線の変化を表します.
移動ターゲットでの条件比較
比較する要因F値p値今回の結果
奥行き手掛かりの有無0.285.603有意差なし
視標サイズ調整の有無1.873.196有意差なし

出典:論文 Section V(各F(1,12)).有意差なしは「影響が絶対にない」ことの証明ではありません.

研究の意義と今後の課題

試作したHMDで,MR空間の静止物体だけでなく,奥行き方向に移動する物体への3D視線を測れることを示しました.一方,評価用静止点の平均誤差は数十cmと大きく,係数推定や装置校正の改善が必要です.参加者も少数であるため,一般化には追加検証が求められます.

PUBLICATION · 2021

3D Gaze on Stationary and Moving Visual Targets in Mixed Reality Environments

Kenta Kato and Oky Dicky Ardiansyah Prima
International Journal on Advances in Life Sciences, Vol. 13, No. 1 & 2 (2021), pp. 104–113.