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PRIMA LAB
Digital Human · Facial Expression · 2022

リアルな顔は,
感情まで伝えられるか.

人物の表情をデジタルヒューマンに転写したとき,怒り・喜び・驚きなどの表情はどこまで正確に再現されるのか.AI表情認識で検証した研究.

A Study on the Quality of Facial Expression in Digital Humans — 実写の人物と仮想人物を同じ条件で評価し,表情の再現に残る課題を明らかにしました.

DIGITAL HUMANSFACIAL EXPRESSIONMULTI-VIEW CAMERA
01 / QUESTION

見た目が似ていても,表情は伝わる?

デジタルヒューマンは,接客,医療,VRコミュニケーションなどへの利用が期待されています.しかし顔の外見が実物に近くても,微妙な表情の変化まで自然に伝わるとは限りません.

本研究では,人物の表情を仮想人物へ移し,AI表情認識が同じ感情表現として読み取るかを比較しました.これは人の主観評価ではなく,認識モデルを用いた客観的な比較の試みです.

対象は「怒り・恐怖・嫌悪・喜び・悲しみ・驚き」の6基本表情.多視点実験では無表情も評価しました.
6種類の表情について見本画像,実際の俳優,デジタルヒューマンを横並び比較
論文 Fig. 2より:6つの表情におけるお手本,実写の人物,デジタルヒューマンの比較.
02 / CREATION

顔の動きを取得し,デジタルヒューマンへ反映

MetaHuman CreatorとUnreal Engineを使用して人物に似せた3Dモデルを作成.iPhoneのLive Link Faceと,通常のカメラ映像から顔の動きを取得するMeFaMoを使用しました.

1

人物の表情を撮影

6種類の基本表情を演じた顔の画像・動きを記録します.

2

デジタルの顔へ転写

顔の動きをMetaHumanに反映し,対応する表情画像を生成します.

3

AIで判定を比較

DeepFaceとHSEmotionが実写と仮想人物の表情をどう判断するかを調べます.

画像生成・評価に使用したツール
役割ツール・技術
デジタルヒューマン作成MetaHuman Creator・Unreal Engine
俳優の表情取得Live Link Face(LLF,30 fps)
多視点表情の取得MeFaMo(MediaPipeベース)
表情認識器①DeepFace
表情認識器②HSEmotion(enet_b2_8.pt)
分析する表情怒り・恐怖・嫌悪・喜び・悲しみ・驚き(多視点では無表情を追加)

出典:論文 Section III–IV.表情認識モデルの出力は感情そのものの真値ではありません.

03 / MULTI-VIEW

21台のカメラで,顔をさまざまな方向から撮影

表情の見え方はカメラの角度でも変わります.研究では21台のWebカメラを並べ,同一人物の顔を複数方向から同時に撮影する装置を構築しました.

21台のカメラを設置した多視点顔撮影装置の構造と撮影角度
論文 Fig. 1より:水平・垂直の撮影方向と21台のカメラ配置.
単一俳優の表情データ
協力者日本人女性1名,22歳
表情基本6表情
各表情の時間5秒
撮影速度30 fps
画像数人物・デジタルヒューマンそれぞれ計900フレーム
多視点カメラの実験条件
カメラ21台(3行×7列)
解像度640×480 px,30 fps
水平方向−30°~+30°,10°刻み
垂直方向−20°・0°・+20°
協力者17名,18~22歳
取得した顔画像計2,142枚
異なる角度から撮影した驚きの表情と対応するデジタルヒューマン表情
論文 Fig. 3より:実際の顔の「驚き」と,対応するデジタルヒューマンを21方向から比較.
04 / RESULTS

人間の表情とデジタルヒューマンの表情は,同じようには認識されなかった

俳優の表情に対するAIの判定は比較的良好な種類がありましたが,同じ表情をデジタルヒューマンへ転写すると誤判定が増えました.とくに喜び以外の表情の再現と判定に課題が見られました.

俳優1名の表情に対するHSEmotionの再現率(論文 Table III・IV)
表情実際の人物デジタルヒューマン
怒り87%算出不可
恐怖100%算出不可
嫌悪0%算出不可
喜び100%100%
悲しみ96%算出不可
驚き73%算出不可

論文の混同行列に記載された値.デジタルヒューマンの「算出不可」は,当該表情に対応する評価フレームが表に示されずNaNになったものです.0%と同義ではありません.

多視点の人物表情における撮影方向への安定性
認識器実写人物の多方向撮影転写した仮想人物の評価
DeepFace角度によって推定結果が変動しやすい多くの表情を適切に認識できず
HSEmotion水平方向の変動が比較的小さい表情の誤認識が目立つ

出典:論文 Tables V–XII.ここでの「安定性」は撮影角度を変えたときの認識出力の変動の小ささで,必ずしも正答率の高さを意味しません.

6感情の認識結果をカメラ角度ごとに丸の大きさと色で可視化した図
論文 Fig. 7より:HSEmotionによる各表情の認識出力を,水平・垂直の撮影角度ごとに可視化.

実写で高性能な認識器でも,仮想の顔では課題が残る

人物の表情認識技術を,そのままデジタルヒューマンの品質評価に使うだけでは十分ではありません.論文は,実写とデジタルヒューマン双方の特徴を考慮した評価モデルの必要性を示しています.

また,研究で使ったMetaHuman画像は利用条件により再学習データへ利用できず,モデルの追加学習を行えていません.今後は適切なライセンスの表情データを用いる必要があります.

PUBLICATION · 2022

A Study on the Quality of Facial Expression in Digital Humans

Shiori Kikuchi, Hisayoshi Ito, Oky Dicky Ardiansyah Prima
International Journal on Advances in Life Sciences, Vol. 14, No. 3 & 4, pp. 110–119 (2022).